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告示194号第四第一号イの構造仕様による準防火地域での木造3階建ては竪穴区画不要
告示194号第四第一号イの構造仕様による準防火地域での木造3階建ては竪穴区画が必要か不要かの判断が難しいので、同業の方への参考資料として下記まとめてみました。
先に結論を書きますと、令112条11項の竪穴区画は不要になります。

これを読み解くには、平成30年の法改正とその前後の流れをしっかり確認しておかないと理解することができません。
難解な判断を紐解くには、表面的な法文だけではなく、何を契機にどういう方針の元何故法改正されたのかを把握する必要があります。
平成30年の防火避難規定の法改正は、平成29年の新潟県糸魚川市で発生した市街地火災を契機に改正が行われました。
糸魚川の火災においては、準防火地域において現行法に合致していない裸木造が密集しており、大規模な延焼が問題となりました(死者無し)。
延焼を防止する性能を建物外皮に備えていればこのような大規模延焼を防ぐことが出来た教訓から、延焼防止の観点から法整理が行われました。
防火避難規定においては、法61条~法64条が整理され、耐火建築物・準耐火建築物以外に延焼防止時間という概念をもとに延焼防止建築物・準延焼防止建築物が新たな選択肢として定められました。
準防火で木造3階建てとなると、まず基本は準耐火建築物での設計が主となりますが、法改正前だと基準法上例外的な位置づけで「旧令136条の2=準防木3仕様=技術的基準適合建築物(昭和62年制定)」というマニアックな手法も存在していました。
この手法を活用することによって延500㎡以下であれば竪穴区画無しで設計ができました。
しかし法改正によって、令112条11項(旧令112条9項)の竪穴区画において、従来の「主要構造部が準耐火構造であり3階に居室を有するもの」に加えて、新設の延焼防止建築物と準延焼防止建築物も竪穴区画が必要になりました。
法改正において旧令136条の2の規定は、告示194号第四第一号イにおいて再度規定されていますが、これは準延焼防止建築物の一部という位置付けになっています。
よって、「旧令136条の2」を受け継いだ「告示194号第四第一号イ」の構造規定で設計する場合、竪穴区画が追加されるという風に法文上読めてしまいます。
法改正に際して、国交省のHP内に質疑応答集があり、「竪穴区画追加という規制強化の方針なのか?」という問いに対して「規制を受ける対象としては想定していないため、規定の適用を受けないものとして扱って差し支えありません」と記載があります。これは今後も竪穴区画は不要ですよという意味です。
ここがややこしいところで、表面上は竪穴必要と読めるが、実は竪穴不要という。

以上を踏まえ、市の建築指導課と民間確認機関にヒアリングしたところ、「竪穴区画は必要です」と。
112条11項読むと、竪穴区画は必要ですと。
えっっ、質疑応答集で条文作成した国交省が不要と書いていますよ?と伝えても、必要と。法文上必要としか読めませんの一点張り。
色々話していると、そもそも建築指導課も民間機関も旧令136条の2すらも理解しておらず、尚且つ法改正の主旨も経緯も理解しておらず、表面的に法文を読むのみで。
こういう時に考えて欲しいのが、法改正の主旨なのですが、法改正に先立ち準防木3仕様において竪穴区画無しによる3階からの逃げ遅れ事案があって問題になったので、竪穴区画が追加していきたいという経緯があるのであれば流れがクリアですが、そういう話は皆無であり。あくまで法改正は延焼防止の観点からの法改正なので、全く竪穴区画関係を強化する必要性もないしその意図も国交省にはありません。
全く進展しないので、ダメ元で国交省にメールで問い合わせたところ、翌日に直接電話を頂き、「竪穴区画は不要と考えています」とのこと。
ただ同様の問い合わせはたまにあるようで、もしかしたら今後表現の仕方を修正するかもしれないような雰囲気でした。
その旨を民間審査機関に伝えたところ、即「竪穴区画は不要」に方針転換。
じゃあ今までの主張は何だったのですかという感じですが。
法改正の主旨を理解せず表面のみの法文で判断していると、このような芯の通っていない安易な判断になります。
兵庫県の確認申請の手引きという資料にとても分かりやすく記載がありますので、審査機関で竪穴区画有りと言われてしまった方は、反論資料として活用されると良いかと思います。
兵庫県の確認申請の手引き(P.69)
大阪市の建築基準法取扱い(P.98~99)
国交省 建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)に係る質疑応答集
平成30年改正建築基準法に関する説明会(第3弾)審査者向けQ&A

以前も一回遭遇したことがありますが、審査側の知識不足・理解不足が原因なのに平気で間違った判断を下されることがあります。
それを是正させるために、こちら側があれこれ資料を揃えて説明してやっと判断が正常に下るケースがありますので。


Top▲ | by kajinoryuji | 2022-04-01 17:42 | 建築と法規 | Comments(0)
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