岡山県建築士会の会報誌に寄稿させて頂きました。
岡山市には東湖園という江戸初期に作られた小堀遠州流の回遊式庭園があります。 個人所有でしたが、昨年末閉園し、今年からマンション建設の工事に向けて、庭や建物の解体が始まりだしたところです。 ご存知の方も多いと思いますが、2013年12月より閉園していた門田屋敷の東湖園の跡地活用として、先日マンション計画が発表されました。 非常に残念に思っている方も多いのではと思います。 いつもこのような話を聞くのは、壊される直前の最後のタイミングが多く、メディアでは取り上げられますが、現実的には救う術がありません。 多くは所有が変わってしまっており、手の出しようがなく、また多くは開発目的で取得している為、土地に価値があり、建物の文化的価値には興味がないようです。 特に私達が動かない限り、このような事例は、今後も岡山で続くのではないでしょうか。 このような貴重な建物を守るにはどのようにしたらよいのでしょうか。 私は次の2点が重要なのではと思っています。 1点目は、多くの人達に利用してもらう建物であること。公共の建物に限らず、民間の建物であっても同じで、人々に愛され使われ、そこで様々なイベントがあり、多くの思い出が育まれ、建物と共に人々の日々の生活がある、そんな旧友のような懐かしさの感じられる建物でいられたならば、最期を迎える前にきっとみんなが壊されないように動いてくれるのではないでしょうか。 いかに多くの人々の心・記憶と共に過ごしてきているかが重要です。 2点目は、所有が誰かという話があります。民間の所有であれば文化財等の登録による規制がない限り、市民や行政は結局手を出すことができません。 1点目をクリアしたとしても2点目で結局手が届かなかった建物は数知れずあります。2点目を解決する一番単純な方法は、行政が買い取るという形があるかと思います。 文化財と認め条例等に従って所有を公共に移すことによって、最悪の事態を回避するというケースはあるかと思います。 また、別のアプローチ方法としては、現所有者と良好な関係を築き、頻繁に交流を継続していく中で、存続が危なくなる際には、保存・改修を前提に購入を考えてくれる新オーナーを見つけて紹介するなど、活用方法を一緒になって考えていくやり方もあるかと思います。 特に気を付けなければいけないのが、近現代の建築かと思います。その文化的価値判断がまださほど確立されていない為、所有者・行政・市民共にその建物の重要性に気づいていないケースもあるかと思います。 そういう近現代の建築について、現所有者と力を合わせ、人々に存在を広めたり、積極的にイベントを仕掛けたりして、建物を知ってもらう、建物を使ってもらうことが必要なのではと考えています。 その活動を岡山県建築士会として行うのも一つの方法ではないでしょうか。 気づいたら岡山にある近現代の名建築がなくなっている、そんな日がいつか来ないように、今のうちから動く必要があるようです。 丸菱建築計画事務所 Top▲ |
by kajinoryuji
| 2014-08-08 16:31
| 建築と文化
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Comments(4)
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Mimiedelaloire
at 2014-08-10 21:11
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いい記事をありがとう。東湖園とても残念ですね。
日本では、古いものを守るということに関心が無さすぎる。啓蒙が必要ですね。今からでも遅くない。でも、ある日気がついたら古いものは何も残っていない、ということに。歴史財産を失うことは、根無し草みたいに、心も、すさびます。 こちらフランスでは、街なかの古い館など行政が買い取って、保存回収をして、文化教室の会場にする例が多いです。 市民皆で、歴史的な建造物の価値を日々実感し、文化アイデンティティを守り続けるという誇りがすごくですよ。 一度、ロワールの古い橋が崩れ落ちたとき、高くついても、元どおりの古い橋を復元ましたよ。
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kajinoryuji at 2014-08-11 10:26
書き込みありがとうございます。
長年受け継がれてきた価値観や歴史・教育が、そういう文化を維持させているのでしょうね。やって当たり前のレベルが高いのでしょう。 日本もより観光客を増やそうと言っていますが、こういった施設がなくなっていっては、観光すべきところが失われていきますね。
ご無沙汰しております。戦略的には、二つでしょう。この用地取得者の開発利益を先回りして算出したうえで、歴史的建造物を保存した場合でも同等、もしくはそれ以上の付加価値が創造できることを示す。もうひとつはこの案件の文化的価値を算出して行政に後押ししてもらいながら、賛同者と共に買い取る、という手です。その場合、地元の核になる資本力のある組織か企業が必要ですから、個人情報流出でマイナスイメージのベネッセとか、民事再生になった林原とか、その他全国的には無名だが納税者番付け等から有力企業をみつけだし、岡山県の建築士会をまとめあげて、できれば議員の先生も巻き込みながら、企画書を持ち込んでみてはどうでしょう?
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kajinoryuji at 2014-08-15 10:10
ありがとうございます。
1.開発業者の利益を確保した中で、保存することでも利益を損ねることがなく、業者としてのイメージも上がる。業者と対立するのではなく、一緒に保存しつつ開発の形に誘導する。 2.行政による買い取りでなくとも、行政の文化的お墨付きの元で、資本力のある地元企業が買い取る。士会・議員を巻き込みつつ。 1の考え方は、思い付きませんでした。なるほど、こういう形も有りなのですね。一般的に「保存運動」とかとなると、業者と対立する構造がありがちですが、一緒に保存の方向性を考えつつ、そこに利益を出していく方法もあるのですね。
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